旧法戸籍とは、明治31年式戸籍。大正4年式戸籍を指しまして、現行戸籍となると、昭和23年1月1日~現在に至るまでの戸籍を指します。
旧法戸と現行戸籍、それぞれ編製原因と消除原因が異なりますので、相続人を確定させるなどの作業で戸籍を読み解かなければならないときには、注意が必要です。
これを見落とすと、足りてない戸籍で相続人を特定してしまうので、しっかりと理解しましょう。
旧法戸籍の編製原因と消除原因
旧民法では家の継続を前提とした考えのもと、戸籍法が成り立っておりました。
家は戸主と家族からなり、戸主は家督相続により順次承継され、家は親から子へ子から孫へと引き継がれていくものとされておりました。
戸主は家制度の中では要的な存在であり、戸籍は戸主を基本として編製されるものであるため、戸主が後退すれば前戸主の戸籍は消除され、新戸主のこせきが編製されました。
また新しい家が設立されればい、新戸籍が編製され、家が消滅すれば戸籍も消除されました。
戸籍に編製原因と消除原因は『戸主の事項欄』に記載されてます。
ただし、明治31年戸籍での戸籍の編製原因については、『戸主ト為リタル原因及ヒ年月日欄』に記載されます。(他市町村からの転籍と戸籍の改製を除く)
こちらの事項欄には、過去から現在に発生した出生・婚姻・家督相続・養子縁組などの身分事項が記載されているため、旧法戸籍では、『何が編製原因であるいは消除原因なのか』を把握しておかなければなりません。
分かりやすいところですと、現行法戸籍では『婚姻』は戸籍編製原因ですが、旧法戸籍法では編製原因ではないです。
旧法戸籍で婚姻を戸籍の編製原因として読み解いてしまうと、戸籍の編製日を間違えてしまい、相続に必要な戸籍が不足してしまう可能性があります。
旧法戸籍の新戸籍編製原因
①家督相続(戸主の交代)
②分家(当事者の意思による家の設立)
③一家の創立(法定の原因による家の設立)
④廃家または絶家の再興(当事者の意思による家の設立)
⑤他市町村からの転籍
⑥戸籍の編製
旧法戸籍の戸籍消除原因
①家督相続(戸主の交代)
②廃家(家の消滅)
③絶家(家の消滅)
④嫡出でない子が、母の家に入ることができないため一家創立後、父の認知により父の家に入った場合(家の消滅)
⑤他市町村への転籍
⑥戸籍の編製
廃家・絶家とは
ここでよく登場する言葉に聞きなれに言葉がいくつかでてくると思います。
特に廃家や絶家という言葉は、今では全くと言っていいほどに使われません。
これは、法律上の家を消滅させる身分行為であり、戸主だけが行うことができました。
廃家により、その家に在籍していた廃家者とその家族は他家に入りました。
しかしすべての戸主が廃家できたわけではなく、あたらしく家をつくった戸主(一家創設・分家)のみ、廃家できましたが、家督相続による戸主は祖先の祭祀のために、原則として廃家できませんでした。
絶家とは、廃家のように戸主の意思によるものではなく、家が自然に消滅することをいいます。
家督相続が開始したが、その家の家督相続人がいないときは、絶家となります。
現行戸籍の編製原因と消除原因
現行戸籍の編製原因と消除原因は「戸籍事項欄」を見ます。
現行戸籍のすべての戸籍の戸籍事項欄には、編製事項が記載されており、除籍あるいは改製原戸籍については、戸籍に在籍者がいなくなり、全部消除された、他の市町村への転籍で消除されたまたは改製によって消除されたことが記載されてます。
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旧法戸籍では、戸籍の編製や消除日を判別するために、戸籍の編製・消除原因を覚えておく必要がありますが、現行戸籍では編製。消除日は、前出の戸籍事項欄を見れば分かります。
それでも現行戸籍の編製・消除原因を覚えておく必要がありますので、以下にご説明します。
現行戸籍の編製原因
◆日本人同士の婚姻の届出があったとき。ただし婚姻の際、夫の氏を称する場合に夫、妻の氏を称する場合に妻が戸籍の筆頭者であるときは除く(戸籍法第16条1項)
◆外国人との婚姻の届け出で日本人が筆頭者でないとき(戸籍法第16条3項)
◆筆頭者およびその配偶者以外の者が、これと同一の氏を称する子または用紙を有するに至ったとき(戸籍法第17条)
◆離婚・離縁・婚姻もしくは縁組の取り消しによって、婚姻・縁組前の氏に復する場合に、復籍すべき戸籍が既に除かれているとき、または新戸籍編製の申し出があったとき、(戸籍法第19条1項)生存配偶者が婚姻前の氏に復する場合、あるいは氏を変更した子が成人し従前の氏に復する場合も同じ(戸籍法第19条2項)
◆離婚(離縁)または婚姻(縁組)の取り消しの際に称していた氏を称する旨の届け出が離婚(離縁)跡ヵ月以内にあった場合で、その届出をした者が筆頭者でないとき、または筆頭者であっても、他の在籍者があるとき。(戸籍法第19条3項)
離婚により復籍し婚姻前の氏に戻ったが、婚姻中の氏の方が社会的・経済的に都合が良いという場合、離婚して3か月以内なら家庭裁判所の許可なく届出により新戸籍を編製し、氏を婚姻中の氏を称することができます。
しかし、氏の変更の届出をした者が戸籍の筆頭者の場合、戸籍の氏名欄が婚姻前の氏が婚姻中の氏に変更されるだけで、新戸籍は編製されません。ただし同じく筆頭者であっても、子が同籍している場合、氏の変更の効果は届出者本人のみで、この子には及ばないため、届出人は婚姻中の氏、子は婚姻前の氏を称することになってしまいます。
同一戸籍に氏の違い者は入れませんので、届出人は氏の変更による戸籍を新たに編製し、婚姻中の氏を称することになります。
なお、離婚の届出と掃除に婚姻中の氏を称する届出をした場合、常にその者について新戸籍を編製することになってます。
◆配偶者のあるものが縁組、離縁などにより、氏を改めたとき(戸籍法第20条)
◆外国人と婚姻した者が、外国人の配偶者の氏に変更する旨の届け出があった場合、あるいはその者が離婚して元の氏に変更する届出があった場合で、同籍者の子が他にあるとき(戸籍法第20条の2の1項)
外国人と婚姻しても氏の変更はありませんが、外国人の氏に変更する旨の届出をすれば、外国人の氏を称することができます。
ただし、本人以外に子が同籍しているときは、氏の変更の効果がその子には及ばないため、氏の変更者は新たに氏の変更による新戸籍を編製することになります。
子はそのまま元の戸籍に在籍しているので、親子の戸籍と氏が別々となってしまうため、子は氏を変更した親の新戸籍に同籍する旨の入籍届をすることにより、戸籍だけでなく氏も同一とすることは可能です。
◆父または母が外国人である場合で、筆頭者またはその配偶者でない子がいる外国人である父または母の氏に変更する届出があるとき(戸籍法第20条の2の2項)
戸籍の筆頭者ではない子は、日本人の親が外国人の配偶者の氏に変更しない場合には、外国人の親の氏を称することはできません。
外国人の親の称している氏に変更する場合は、家庭裁判所の許可を得て、氏の変更を行い新戸籍を編製します。
前出の場合とは、逆となりますので、日本人の親はそのまま元の戸籍に在籍しているので親子の戸籍と氏は別々となります。
◆特別養子縁組の届出があったとき(戸籍法第20条の3)
◆性別取扱いの変更の審判があった場合、審判を受けた者の戸籍に記載されている者または記載されていた者が他にあるとき(戸籍法第20条の4)
◆分籍の届出があったとき(戸籍法第21条2項)
◆入るべき戸籍のない帰化者、未就籍者、棄児の各届出があったとき(戸籍法第22条)
◆他の市町村からの転籍
◆戸籍の改製
現行戸籍の消除原因
◇戸籍の全員が死亡その他身分変動により除かれたとき
◇他の市町村への転籍があったとき
◇戸籍の改製
明治31年式戸籍の編製日の判別方法
明治31年戸籍の特徴は「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日欄」があります。
まず注意しなければならないのは、この欄に記載されている日付は「戸主として初めて戸籍が編製された日」です。
これは、必ずしも提示された除籍謄本、改製原戸籍の編製日と一致するわけではないのです。
「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日欄」と一致している例
明治33年式戸籍(サンプル1)
この例では前戸主文左衛門が死亡したため、明治33年1月18日家督相続により戸主となってます。
戸籍が編製された日は、明治33年1月21日、戸主となったことを届け出た日に編成された戸籍ということが分かります。
次の戸籍は、サンプル1の続きで、転籍により新たに長岡京市で編成されたものです。
「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日欄」と一致してない例
明治31年式戸籍(サンプル2)
サンプル1と同様に「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日欄」には、明治33年1月21日家督相続により戸籍が編製されたと記載されてます。
次に戸主の欄には、明治41年京都市下京区から転籍してきた記載が読み取れます。
そして本籍欄には、現在の本籍地は京都府長岡京市と記載されてます。
し京都市から長岡京市は管外転籍ですから戸籍編製原因となります。
次に昭和12年4月15日太吉が死亡し、その届出を藤十郎から出されてます。
明治31年式戸籍では、死亡は戸籍の編製原因でも消除原因でもなく、重大な身分事項ということで記載されます。
そして戸主が亡くなったため、次の戸主として藤十郎が家督相続を行い、同園4月15日にこの戸籍は消除されてます。
注意して読み取らなければならないのは、
この戸籍には、家督相続と管外転籍の二つの戸籍編製原因が記載されているため、新しいほうの管外転籍(明治41年11月1日)がこの戸籍の編製日となります。
サンプル1とサンプル2のような戸籍のうち、サンプル2の戸籍だけを提示されると、ほとんどの方が「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日欄」に惑わされてしまい、編製日は明治33年1月21日であると勘違いしてしまいます。
相続手続きするさいには、このような複雑な書き回しをした戸籍を読み解いていかなければならないので、本当に大変です。