民法《相続編》 遺言書

相続法の改正により“法務局で自筆証書による遺言書が保管可能”になります!

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平成30年7月に相続法が大きく改正されました。

この改正により、残された配偶者が安心して安定した生活を過ごせるようにするための方策などが導入されることになりましたが、その他の大きな改正として、法務局で自筆証書遺言を保管することが可能になりました。

今回は、こちらの内容について、詳しくご説明したいと思います。

自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能になりました

従来は、自筆証書遺言は、添付する財産目録も含めて、すべての全文を自書して作成しなければなりませんでした。

その負担を軽減するため、遺言書に添付する相続財産の目録については、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなど、自書によらない書面を添付することによって自筆証書遺言を作成することができるようになりました。

上記図解の左側は、遺言書部分ですので、今まで通り前文を自筆する必要があります。

しかし、左側の財産目録部分は、通帳のコピーやパソコンなどにより作成したものを添付すればよいとされました。

法務局で自筆証書による遺言書が保管可能に

自筆証書遺言を書き残す人のほとんどは、その遺言書を自宅で保管していることが多く見受けられました。

相続人は被相続人が遺した遺言書を発見した場合、開封せずに裁判所による検認を受けなければならないとされています。

しかし、このような検認手続きを経なければならないという知識のある相続人は決して多くなく、遺言書を開封してしまう相続人が多く見受けられます。

検認前に開封してしまう相続人が後を絶たないのは、致し方ないとしても、その内容を見るや否や、自分に都合の悪い内容の遺言書である場合、その遺言書を隠匿する相続人も実際にいました。

こうした問題によって相続をめぐる紛争が生じることを防止し、自筆証書遺言をより利用しやすくするため、法務局で自筆証書による遺言書を保管する制度が創設されます。

自筆証書遺言の場合は、遺言者の死亡後に家庭裁判所で「遺言書の検認」という手続を経なければなりませんでした。

しかし、今回創立された遺言書保管制度を利用した場合は、この「遺言書の検認」の手続を受ける必要はないです。

具体的な手続きとして、自筆証書遺言を法務局に本人自らが出頭、持参し、法務局で厳格な本人確認をされたうえで、遺言書の原本を保管してもらうという流れになります。

そのため、例えば生前被相続人が『遺言書は書いたから』と言っていたにも関わらず、いくら探しても遺言書が見つからないという事態は避けられますし、災害にも強く隠蔽・改ざんされる恐れもないです。

気を付けなければならないのは、遺言の内容について審査される仕組みになっていないので、遺言書の内容に法的な問題(トラブルの種)を含んだ遺言書であっても、型式面のみが審査対象とされており、トラブル可能性のある遺言書がそのまま作成されてしまう恐れがあります。

本人申請という点については、厳格に求められており、代理人による申請は全く認められません。

仮にご病気などの事情で法務局に出頭ができない場合は、代替制度が用意されていないので、この遺言書保管制度を利用することはできません。

余談ですが、ご病気などで法務局に出頭できない場合、公正証書遺言の作成は検討することが可能です。
公正証書遺言を作るときは公証人の出張制度があるため、自ら出頭ができなくても、公正証書遺言を作ることができます。

申請・保管の管轄

申請ができる法務局(管轄)は、次のようになっています。
・遺言者の住所地を管轄する法務局
・遺言者の本籍地を管轄する法務局
・遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局
・既に遺言書を法務局に保管していて、追加で遺言書を保管する場合は、既に遺言書を保管している法務局

申請できる法務局の列挙のうち、4つ目の条文を読み込む限り、複数の遺言書を保管できることになっております。

※民法上、作成日付が複数の遺言書がある場合で、内容が抵触する部分がある場合、日付の新しい遺言書に書かれている部分が優先されます。

秘密の保持

遺言者の生存中、遺言者以外の人は、保管している遺言書を閲覧したりできませんので、遺言の内容を秘密にすることができます。

保管を取りやめる「撤回」

保管を取りやめる場合(これを「撤回」といいます。)は、遺言書を保管している法務局に本人自ら出頭して、保管を取りやめる「撤回書」を提出すれば、いつもで取りやめることができます。
(申請時と同様に、厳格な本人確認が実施されます。)

撤回に係る手数料は、無料のようです。

保管遺言書に関する各種証明書など

遺言書情報証明書の交付請求

相続人や受遺者(遺贈を受けた人)などは、スキャンされた遺言書画像を用いた「遺言書情報証明書」の交付請求をすることができます。
この請求は、全国の法務局でできるようになります。
遺言書情報証明書の交付請求は、遺言者が亡くなった後でなければできません。

遺言書の原本閲覧請求

相続人や受遺者(遺贈を受けた人)などは、遺言書原本の閲覧請求をすることができます。
この請求は、遺言書の原本が保管されている法務局に対してしかすることができません。
遺言書情報証明書の交付請求は、遺言者が亡くなった後でなければできません。

相続人や遺言執行者に対する通知制度

遺言書情報証明書の交付請求か遺言書の原本閲覧請求のいずれかの請求をすると、法務局から相続人などに対し、「遺言書を保管している旨」の通知される仕組みとなっている。

そのため他の相続人などに対して、秘密にしようとしても分かり得てしまうということになります。

まとめ

法務局で自筆証書による遺言書が保管が可能になることにより、公正証書遺言のメリットがなくなると言う専門家の方もいますが、僕は少し違うと思います。

公正証書遺言では、法律の専門家である公証人が遺言書の内容について、しっかりと精査して助言してくれます。

また、こちらの記事でもお話させていただいた通り、病気など何らかの理由によって、公証人役場に出頭できない場合、公証人による出張も可能です。

遺言書作成をお手伝いさせていただいて感じることは、遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言にしておけば、まずは一安心だと思います。

それでも従来の自筆証書遺言と比較すると、大きく改正されて、利用しやすい制度に変化したということに間違いないと思います。

相続が発生して、遺言書がない場合で、相続財産のほとんどが不動産である場合、相当高い確率で揉めます。

相続問題は、誰しもが避けて通れない問題なのです。

自分の親に『遺言書書いて』とは、なかなか言えないのが現状ですが、少しだけ話し方を変えて『お父さんの財産、どのように分けたら良いかな』などという、話題から入っていけば、少しは前向きな話合いになるのではないでしょうか。

東北から争続を無くし、笑顔相続になりますように!

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最近は月一の会合に参加できておりませんが、笑顔相続を願う気持ちは変わりません。

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