大正4年式戸籍では新戸籍が編製された際に、従前戸籍の記載事項はすべて移記する取扱いがされていました。
例えば過去に数回の転籍をしているような場合、転籍地の戸籍には新戸籍編製事項を含めて、すべての転籍事項が記載されており、身分事項についても同様にすべて記載されてました。
大正4年式戸籍の戸主の「事項欄」に複数の戸籍編製事項の記載がある場合、その中で一番新しい戸籍編製事由が記載されている日が、大正4年式の場合の編製日となります。
注意しなければならないのは、正確な編製日を判別するためには、旧法戸籍の戸籍編製事由をしっかりと頭に入れておかなければ、戸主の「事項欄」をチェックしても編製日を間違ってしまう場合があることです。
編製原因の記載が一つだけの大正4年式戸籍
旧法戸籍では出生は戸籍の編製原因ではないです。(例外として嫡出でない子の一家創立は例外)
また、現行戸籍では婚姻は新戸籍編製原因ですが、旧法戸籍では婚姻は戸籍編製原因ではありません。
戸主であった者が亡くなり家督相続が行われて、新たなものが戸主になりますと、家督相続は新戸籍編製原因です。
他の市町村への転籍は、戸籍の消除原因となります。
これらのことから、戸籍の編製原因は、家督相続のときであり、消除原因は他の市町村への転籍ということがわかります。
複数の編製原因の記載がある戸籍
注意して読み解かなければならない戸籍です。
編製原因は、大正8年の家督相続のみが戸籍の編製原因です。
しかしこの後に、昭和3年に京都府長岡京市から東京都中央区に転籍してます。他の市町村からの転籍は戸籍の編製原因となりますので、戸籍の編製原因が複数存在することになります。
これは、大正4年式戸籍の場合、新戸籍編製の際には従前戸籍に記載されていた事項は、基本的にすべて移記する取扱いがされていたためです。
戸籍が編製替えされると、その回数分の戸籍編製原因の履歴が新たに編製された戸籍に記載されていくのです。
そのため、その戸籍謄本に複数の戸籍編製原因が記載されている場合、戸籍編製原因のうち、一番新しい日付のものが編製原因であり、編製日となります。
続きを見ていきますと、昭和20年に勝太郎が死亡してます。
死亡は戸籍編製原因でもなければ、消除原因でもないです。
そして戸主の勝太郎が死亡したことにより、京野一郎が昭和20年6月7日に家督相続してます。
前戸主から新戸主への家督相続は戸籍の消除原因ですから、この時にこちらの戸籍が除籍となったと判断できます。
したがって、転籍による戸籍の編製原因以降、この戸籍が消除されるまでの間、新たに戸籍が編製されることはなかったため、前述の複数あった戸籍編製原因のうち、新しい方「転籍による戸籍の編製」が戸籍編製原因となります。
この戸籍は、昭和3年3月3日に転籍によって編製され、昭和20年6月7日に家督相続により、消除となり除籍簿に移されました。
しつこいようですが、注意点は戸籍の編製原因が複数あることです。
仮にこちらの戸籍を提示されたとき、戸籍編製原因である家督相続の記載だけを見て、大正8年がこの戸籍の編製日であると判断してしまった場合、実際の編製日である昭和3年までの戸籍を確認しないことになりますので、相続人確定などの実務においては、確認漏れをしてしなう場合があります。